~働く人と組織のWin-Winを目指して~
医療法人精華園 海辺の杜ホスピタル 健康推進室室長 槇本宏子
職場復帰や治療しながら働き続ける従業員100名以上のご支援・・・これが約30年間事業所の保健師として活動してきた私の“今”を支えているといっても過言ではありません。背景にある疾患は様々ですが、ご支援する中で、見えて来たものがあります。それは、ご本人にも、組織にとってもWinになる“折り合いのつけどころ”をいかに見つけるか?です。
治療を受けられ、「気力は戻ってきていても体力面から考えると復帰は早いだろう」と思われる時期でも、職場や主治医との連携をしながら出来るだけ、ご本人の「早く復帰したい」という希望を尊重できるように動いてきました。ある程度、収入にもつながる半日程度の労働時間を確保しながら徐々に勤務時間数を増やすという体制が主流ですが、人によっては1時間程度から慣らしていくという体制も取っています。“病気前の職務が全うできない場合でも、ご本人と組織にとって折り合う所を探す”という支援スタイルが築けるようになったのは、「会社にとっても大事な人材だから何とか支えてあげて欲しい」というスタンスが、私の行動の後押しとなっています。
折り合う所を探すには、いくつかのコツがあり、特に必要なのが、①ご本人の本音を聴く②上司が考えている働き方の本音(経営トップの考え方を含む)を把握する ことです。上司「仕事できますか?」本人「できると思います」といった挨拶程度の簡単なやり取りではなく、具体的な業務の可否を一つずつしっかりと共有しあいながら次のステップへ進んでいくことが大事だと感じています。この①と②を上司(組織)と本人が共有するために、実施前、実施中、次のステップに上がる前には面談をし、3者(本人、上司、保健師)プラス場合によっては労務担当者も入り共有化を図ります。時間は少々必要になりますが、お互いに本音が分かりあえると、あとは、組織内で上司が上手く調整をし、ご本人にとっての居場所を作ってくれています。
また、情報は隠すものではなく、現場で必要な情報は、適切に共有しあえる環境づくりも成功の鍵だと感じています。上記のコツを中心に、必要な情報を共有しつつ、コミュニケーションを図りながら進めると、ほとんどの方が「仕事と治療の両立」が出来るようになってきます。
今後も、コツを大事に、関係者を巻き込んで連携しながら、高齢者雇用も見据えた働き方にも対応できるよう活動を続けていきたいですし、産業保健総合支援センター活動を通じてこの“コツ”を広めたいと考えています。