
「えあんべ」な両立支援~秋田から~
秋田産業保健総合支援センター 和田 桐子
東北の日本海側に位置するなまはげときりたんぽの国、秋田県での治療と仕事の両立支援に関わる活動から見えてきたこと、秋田の風土の中での両立支援についてお話をさせていただきます。
高齢化率が39.0%と日本一高く(令和5年調査)、人口減少に歯止めがかからない秋田県においては、働き手をいかに確保していくかが重要な課題です。この課題の解決手段の1つとして治療と仕事の両立支援があります。そしてこの課題を解決する一助になるべく、秋田産業保健総合支援センターの活動として治療と仕事の両立支援の普及促進に取り組んできました。この活動を通して、自分が『秋田の中小企業ではまだまだ両立支援が進んでいないだろう』という先入観に如何にとらわれていたのか気づかされました。秋田生まれ秋田育ち秋田県民のわたしですが、ずいぶんと卑屈な考えを持っていたものです。実際に事業場の方にお会いしてお話を聞いてみると、両立支援という言葉がない時代から、村社会の助け合い同様に事業場の中でも助け合い風土が連綿と息づいているのです。例えば、受診が困難な労働者がいれば病院に連れていき、メンタルヘルス不調で休みがちな労働者がいれば弁当を自宅に差し入れし、受診のための中抜けは時間休を取る必要もなく自由に取れるようにする、なかにはどんなに病気で休んでも給与を満額支払うことにしている事業場もありました。厚生労働省から出されているガイドラインに則った取り決めや文書があるわけではありませんが、中小企業だからこそ、秋田の風土があるからこそ、支援と名称がつくこともない助け合いがあります。このような助け合いについて事業場の方は『えあんべ(いい塩梅)にやってる』などと表現してくださいます。秋田の「えあんべ」な助け合いは、やさしさに包まれた「おらほ(私たち)」の両立支援になっています。皆様の地域でもあるのではないでしょうか。
このような素晴らしい助け合い風土ですが、それだけでは事足りないこともでてきます。昨今では入院期間が短縮され外来診療にて治療を行えるようになったこともあり、従来よりも早い段階からの復職が可能になっています。医学的な知見を踏まえた、より細やかな支援を求められますが、医師からの意見をよく聴取できていない、理解して活用できていないことが往々にしてあります。そのため「えあんべ」な支援の土台に、医師から意見を聴取するための方法を伝えるなど、ちょっと+αの情報をお届けするべく、お話をさせていただいております。
また、医療機関側にも事業場の「えあんべ」な支援を後押ししてもらえるように、厚生労働省のガイドラインを活用した医師の意見書への記載をお願いしております。
他県より高齢化の進む、高齢化率日本一の秋田として、「えあんべ」な両立支援をさらに発展させ、両立支援の先進県になることを願っています。書面にして現わしたものではありませんが、書面にしていないからこそ臨機応変な対応ができる秋田のおおらかで小回りの利いた「えあんべ(いい塩梅)」な支援もあることをぜひ覚えてくださいね。