医療従事者、産業医スタッフ向け



今月の現場から(保健師コラムリレー)

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協会けんぽとの連携活動を活用した「治療と仕事の両立支援」啓発への取り組み

大阪産業保健総合支援センター 産業保健専門職 永田庸子

大阪産業保健総合支援センター(以降、当センターという)では、2019年より全国健康保険協会大阪支部(以後、協会けんぽ大阪支部という)と連携事業を進めています。当センターでの協会けんぽ大阪支部との連携の特徴は、協定・締結等の形式にこだわらずに実務担当者同士がフレキシブルに活動を継続できるよう、両組織に位置づけたことです(企業でいうならば別組織のプロジェクトチームのイメージ)。概ね四半期ごとに連携会議を開催し、お互いの事業の重点課題を共有し、各組織の強みと弱みを理解した上で、互いの事業が円滑かつ効果的に進められるよう、具体的にどのような連携活動をすべきかを検討しています。互いの組織の人事異動等で担当が変更されても、6年間継続できている秘訣は、連携を始めるにあたり、当センターの産業保健専門職(保健師)が調整の中心になり、当センター副所長と協会けんぽ大阪支部長の間で今後の連携の進め方についての認識合わせができたこと、互いの事業目標を明確にした上で協会けんぽ大阪支部のグループ長等を巻き込んだ活動のルール化を行ったこと、実際の活動でお互いのWIN-WINな関係が成り立っていること、等であると思います。現在、協会けんぽ大阪支部の組織の中では、当センターとの連携事業が当たり前に継続できる位置づけとなっています。当センターとしても、協会けんぽ大阪支部との連携を基盤として様々な産業保健事業が展開可能と考えています。今回はその一つとして、両組織が連携した「治療と仕事の両立支援」(以下、両立支援という)についての啓発活動をご紹介します。
【連携を活用した両立支援啓発の取組内容】

1. 協会けんぽ大阪支部の健康宣言事業の活用:将来的には健康経営の認定取得も視野に、まずは健康宣言を目指す事業所に対して協会けんぽ大阪支部から啓発資料等を送付する機会に、健康経営の評価項目の一つである両立支援について事業所に理解してもらうため、当センターが準備した両立支援の情報や支援内容に関するチラシと相談申込書を同封してもらっています。
2. 協会けんぽ大阪支部保健師の教育研修:特に両立支援の相談がありそうな事業所には、両立支援の知識を持つ保健師等が説明することが効果的と考え、当センターの産業保健専門職(保健師)が講師となって、協会けんぽ大阪支部の保健師に両立支援の教育研修を行っています。協会けんぽ大阪支部の保健師に両立支援を正しく理解してもらうことで、担当の事業所への説明・情報提供につながり、必要時には当センターへの相談を勧めていただくようにお願いしています。
3. 連携会議では、上記の活動についての評価も行っています。実際にチラシ配布や教育研修の効果がどうであったか、実際の支援・相談につながったのか、どんな影響があったか、さらに今後どんな展開にするか等、また違う組織の目線からの意見ももらいながら次の展開につなげます。別組織が同じ認識をもって連携した活動をすることで、活動の広がりや波及効果が得られるのではないかと考えています。それぞれが断片的な支援とならないよう、体系的で連続した支援を目指し、連携活動を継続しています。
 両立支援に関する情報は、多様な機関から様々な形で事業所に届けられることで、より良い啓発効果が期待できると思います。当センターでは、協会けんぽ大阪支部との連携を最大限活用し、各々の組織の強みを活かしながら、新しい着想も取り入れつつ、支援を受ける側(事業所)に少しでも広がり、つながる、そんな活動を引き続き進めていきたいと考えています。