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事業場が行っている治療と仕事の両立支援の取り組み状況を調査して
三重産業保健総合支援センター 産業保健専門職 上住 津恵
三重産業保健総合支援センター(以下、当センター)における治療と仕事の両立支援(以下、両立支援)に関わる業務は主に産業保健専門職が担当しています。中でも、両立支援に関する相談は各種機会を捉えて周知をしているのですが相談件数が少ないので、両立支援の普及促進のための事業場訪問支援に力を入れています。
県内事業場を訪問する中で、令和5年6月から、事業場が行っている治療と仕事の両立支援の取り組み状況を把握するための調査を実施したところ、令和6年12月までで130事業場から回答いただきました。主な集計結果をご紹介します。
【取り組みの有無】
治療と仕事の両立を必要とする労働者に対して、治療と仕事が両立できるような取り組みがある事業場の割合は78.5%であり、これを事業場規模別にみると、労働者数50人以上の事業場では92.7%だったのに対し、50人未満の事業場では68.0%と少なめでした。一方、取り組みがない事業場は21.5%ありましたが、その理由は該当者がいないので取り組んでいないとの回答が殆どでした。
【取り組み内容について】
取り組み内容で最も多かったのは、「通院や体調等の状況に合わせた配慮、措置の検討」が97.1%(50人未満の事業場で98.0%、50人以上の事業場で96.1%)で、この取り組みに関しては事業場規模によらず殆どの事業場で取り組んでいることが分かりました。次いで「相談窓口等の明確化」が59.8%(50人未満事業場で54.9%、50人以上事業場では64.7%)、「両立支援に関する制度の整備」が44.1%、「両立支援に関する体制の整備」が22.5%でした。他に、「本人が申出しやすい環境づくり」、「損保がん保険(入院医療費や通院治療費補償)に加入して社員に喜ばれている」という取り組みもありました。
【取り組みに関して困難なことや課題と感じていること】
取り組みに関して困難なことや課題と感じていることがあるのは86.3%であり、その内容をみると、「代替要員の確保」が68.2%で最も多く、次いで「上司や同僚の負担」が48.9%の順となっています。事業場規模別にみると、「代替要員の確保」、「上司や同僚の負担」の次に多かったのが50人未満の事業場では「復職可否の判断」が36.6%、「就業制限の必要性や期間の判断」と「休職を繰り返す労働者への対応」の26.8%であったのに対し、50人以上では「休職を繰り返す労働者への対応」が44.7%、「主治医との連携」が40.4%、「復職後の適正配置の判断」が36.2%となっており、事業場規模による困難点の違いがみられました。
今回の調査結果から、三重県内の事業場においては、小規模事業場における取り組み率の低さもさることながら、取り組みを進めている事業場においても、困難や課題が多く存在することが明らかになりました。また、取り組む上での困難や課題に、「治療と仕事の両立に対する意識啓発」や「社外で相談・連携できる組織の活用」との回答が約2割を占めていたことから、是非、当センターを活用していただくよう、引き続き事業のPR活動を積極的に実施していきたいと思います。周知方法は、ホームページ、メールマガジン、三重産保かわら版、労働基準行政や災害防止団体事業者及び事業者団体等に対して会員への周知依頼をして利用促進を図っています。
産業保健専門職は、三重労働局と連携の上、支援希望のあった事業場への訪問を実施し、両立支援に関する資料の提供や、「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」及び「企業・医療機関連携マニュアル」の案内などを行うことで、両立支援の周知啓発に取り組むとともに、当センターの支援サービスの周知啓発も併せて行なっています。今回の調査結果から明らかとなった事業場規模別の取組状況や課題も念頭に置いて、今後の訪問活動や両立支援業務に繋げていきたいと思います。
そのほか、県内の6医療機関(津・四日市・鈴鹿・松阪・伊勢地域)で出張相談窓口を開設して対応していますが、利用者の利便性を考慮して、令和7年度以降、桑名・伊賀・東紀州地域での新規開設に向け準備中です。なお、個別調整支援については、他県の事業場で働いている方もおられますので、県の垣根を超えた調整が必要不可欠と思われます。隣県の産業保健総合支援センターとも連携して支援を進めていきたいと思います。