今月の現場から(保健師コラムリレー)

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~ 治療と仕事の両立支援inいわて ~

岩手産業保健総合支援センター 萩野とも子

私は平成30年5月から岩手産業保健総合支援センターに勤務しております。実は愛媛から引っ越してきたのですが、県内の面積は北海道に次ぎ2番目で、四国なみの広さと言われており、まずはそれに驚きました。昨今、日本の四季が無くなりつつあると言われておりますが、岩手は今なお四季がはっきりしており、自然豊かな美しい所で、大層気に入っております。生活圏は大きく分けて国道4号に沿った内陸部と、太平洋に面した沿岸部に分けることができます。県内の約6万2千の事業場のうち約77%の4万8千の事業場は内陸部にあり、高速道路も整備されているので、現在は内陸部を中心に事業場訪問を実施しています。ただ沿岸部においても復興道路が次々と開通しており、移動時間が随分短縮され助かっております。
 県では脳卒中死亡率全国ワーストワンからの脱却を図るべく、健康経営推進と脳卒中予防で健康長寿日本一を目指す取組みが推奨されていますので、両立支援の周知啓発の際には、両立支援に係わる準備や進め方等について説明をし、併せて一次予防(生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること)に重点を置いた対策の必要性などもお話しています。
 治療のため休職している方の職場復帰を支援すべく、本人と会社、主治医との調整や、治療を継続しながら無理のない職場復帰のための計画作成の助言等を行っている中で、以下のことを念頭に置いています。
①職場復帰の判断について、主治医による診断書だけで決めず、復職準備性の評価(生活習慣、身体症状、睡眠、復帰への意欲、業務への準備など)や生活記録票などと併せて判断することが大切。
②療養期間をしっかり取得したとしても復職以前と同じ能力に戻らないこともあり、労働者が以前の能力の8割(いや5割)になったとしても、それを受け入れられるか、そのための就業上の措置を準備できるかということが、無理のない職場復帰となり、復帰後の退職を防ぐ。
③両立支援プラン変更について、プラン通りにいかないことの方が普通(実際にやってみないと分からない部分はあり、プラン通りにならなくても大丈夫)。配慮内容・期間に余裕をもったプラン作成が大切。
④本人が感じる復職時の「3つの壁」について、長欠感情の壁(久しぶりの出社に対する不安)、職場滞在の壁(焦り…浦島太郎みたいに感じる)、パフォーマンス回復の壁(できるはず)を理解し、配慮することが大切。
⑤事業場内で配慮することは規定で定めたものでなく、本人からの申出によるオーダーメイドに運用した取組みの方が上手くいく場合がある。社内制度を作ることは大切であるが、それに合わせなくても本人の思いを聞き取るための対話を続けることの方が重要。
 両立支援は、本人、家族、事業者、医療機関、それ以外にも関係機関との連携が必須です。大変奥が深く、関わりを通しての学びがこれまで以上に多く得られると感じます。今後も精進してまいりたいと思います。

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