今月の現場から(保健師コラムリレー)

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働くことに全身全霊をかけた社員の事例より

株式会社インテージ・アソシエイツ 健康づくり推進部 保健師 松坂亜紀子

私が産業保健師として係わった最初の「両立支援」といえるAさんとの関わりは、今でも忘れることはできません。
 Aさんは、癌の治療に専念するために一時休職し、その後、復職していました。しかし、病状は徐々に進行し、易疲労感、労作時の息切れが出現するようになり、職場からも体調を心配する声がきかれるようになりました。定期的な通院加療をしながらの就労継続に関して、Aさん、産業保健スタッフ、人事労務担当、職場上司との話し合いを行いました。
 Aさんは、「皆に迷惑をかけるようになった時は、休職しないといけないことはわかっています。自力で通勤、業務ができる限り働きたい」と、就労継続の希望がありました。
 Aさんの就労意向を尊重するために主治医の意見をもとに、関係部署と連携し、業務調整、時差出勤、就業時間の配慮など、制度を最大限に活用し、かつ、安全配慮を考慮した上で、Aさんが可能な範囲で就労を継続できるように調整を進めました。職場には、急変も起こり得ること、急変時のサポート体制などを共有し、職場の理解や協力が得られるように整えました。
「勤務を継続することで、死期を早めたとしても構わない。自分が長年携わった仕事を全うできることが本望、命尽きるまで働きたいのです」と、笑顔ながらに話され、天国へ旅立つ数週間前まで就労継続したAさんにとって、働く=生きる(希望)だったのではないでしょうか。 「働く」ことに全身全霊をかけたAさんへの支援は、慎重に判断する必要はありましたが、従業員の意向を尊重し、可能な限り実現できるよう最善を尽くす私の支援姿勢にも大きく影響を受けています。

 現在、弊社グループには、両立支援のための特別な措置や規定はありません。しかし、弊社グループでは、働き方改革として、“働き方変革へのチャレンジ”を設定し、社員一人ひとりが「自律的」に「挑戦とコラボレーション」を行う自走風土を進化させるための取り組みとして、「フルフレックスタイム制度」や「リモートワーク」を軸とした施策を推進し、拡充しました。この働き方変革への取り組みによって、治療と仕事の両立支援の幅が広がったと感じています。一方で、「頑張って仕事をしなければいけない」と責任感の強い社員も少なくありません。治療に専念が必要な場合は、一時的な休務が必要となる場合もあります。安心して治療に専念できるように休職・復職の流れを説明、いつでも相談できる体制を整えています。
 本人がどのように働きたいのかを丁寧に聴きながら、疾病、病態の理解を深め必要な配慮を検討するために主治医や産業医と連携のうえ、会社の制度を最大限活用するために人事労務担当者と相談しながら、本人、関係者と一緒に考え整理することが重要だと考えています。幸い弊社グループの働き方変革にともない、より柔軟な働き方を支援できる体制となってきていると感じています。引き続き、会社としての安全配慮を考慮の上、従業員にとって最適な支援できるよう努めたいと思います。

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