今月の現場から(保健師コラムリレー)

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治療と仕事の両立支援と産業保健師活動

石川産業保健総合支援センター 産業保健専門職 亀田真紀

私はこれまで、企業の健康管理室や大学の安全衛生管理室で、産業保健師として産業保健活動全般に関わってきました。現在は、産業保健総合支援センターの職員として、外部機関の立場から事業場や産業保健スタッフへの支援を行っています。中でも保健師には治療と仕事の両立支援と小規模事業場への支援が求められ、主として小規模事業場を訪問をする中で、両立支援についての周知啓発や体制づくりについてのアドバイスを行っています。
 実際には、がんで入院中の社員や会社の方からの復職に向けた相談や、脳梗塞で休業中の社員の復職、高血圧や高血糖などでコントロール不良の方が現在の仕事を継続して良いかどうか、などの相談があります。ご本人との面談でお話を伺う中で、会社へどう伝えるのかを助言することもあります。そして、会社担当者への支援で復職出来た事例も多く経験しました。
 そのような経験の中で高血圧、高血糖、脂質異常などの管理は重大な脳心事故の発症を防止する上でとても大切であると痛切に感じました。健康診断の事後措置として、例え治療中であってもコントロール状況を確認する必要があることを再認識しました。一人一人の健康状態の確認と健診結果を経年的に見ていくことは、とても地道な業務ですが、働く人すべてにタイムリーに支援することが出来ます。
 治療と仕事の両立支援というと、病気休業からの職場復帰支援と思われますが、働く人本人や職場から考えると、健康診断結果からの早期発見・早期治療への勧奨や、思いがけない病気で治療に専念することへの対応、治療を受けながら働くことへの支援等、働く人と職場に寄り添った支援が必要になると思います。
 健康管理は、復職支援(三次予防)のみならず、早期発見早期対応(二次予防)、日常の健康行動への支援(一次予防)を総合的に進めることになります。こういった健康管理活動は、日常の治療と仕事の両立支援でもあり、働く人や会社にとって大きなメリットがある活動であるとあらためて感じています。
 現在、治療と仕事の両立支援の啓発と実際の個別調整支援に関わる中で、多くの企業の取組みに触れることが出来ました。会社によっては、疾病対応だけでなく、育児や介護といった様々なライフイベントについても仕事と両立が可能なように対応されている現状も知ることが出来ました。将来的には、自己学習や地域活動への参加なども含め、個々人の生き方に対応できる柔軟な働き方が一般的になる、その糸口が見えてきたように思います。

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