高知産業保健総合支援センター 産業保健専門職 豊田あさみ
人口減と高齢化のすすむ高知県では、中山間地域の「くらし」「活力」「しごと」を維持することは大きな課題です。
私は産業保健総合支援センター(以下「産保センター」という)の保健師になって5年になりますが、事業場の産業保健活動の支援を通して地域を支える視点を大切にしています。
本県は、東西に長い海岸線のイメージが強いと思いますが、県土の90%が森林(森林率日本一)であり、県民の4割がこの中山間地域に暮らしています。このような中山間地域に多くの小規模事業場が散在しているため、県内4か所の地域産業保健センター(以下「地産保」という)と高知産保センターが連携しながら労働者の健康管理や健康相談、保健指導等の産業保健サービスを提供しています。
そんな活動の中から、山間の町でコツコツと両立支援の体制・制度作りに取り組んでおられる社会福祉系の事業場さんをご紹介します。
最初にお声がかかったのは、コロナ以前ですので、もう2年以上も前になります。
担当者さんからのひと言、「職員さんが例え病気になっても、通院しながら安心して長く働き続けられるように会社は手助けしたいが、何から始めるのがいいだろうか?」がスタートでした。
50人未満の小規模事業場であるため、体調不良で休みがちな職員さんの相談は、地産保の登録保健師が担当し、私は事業場を訪問して厚生労働省の『事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン』に基づき病気休暇制度や短時間勤務制度、時差出勤制度等の勤務制度の整備や、相談窓口の設置などについて説明しました。そして、産保センターの研修会や事例検討会等への参加をお勧めして顔を合わせる機会を持つとともに、年に数回電話・メール等でご連絡をとりながら、進捗の具合をお聴きしていました。
そして、最近、ご担当者の「両立支援は、この職場に絶対必要!」との熱い思いが形になりました。この2年の間、職員会議等で両立支援の制度導入の必要性と両立支援制度の整備内容について説明し、合意形成を得て、社内規則を作成するとともに労使協定を締結して、オリジナルの両立支援制度が出来上がりました。
制度を使う人と組織の業務持続ために合理的配慮が体現された内容です。
担当窓口のお二人は、共に両立支援コーディネーター基礎研修を修了され、本年度から制度の運用が開始されました。(※1)
<担当者様の言葉>
当社は職員数も少ないですが、いま働いている職員が安心して長く働きつづけられるよう、働きやすい職場づくりのために何か取組みができないか考えていました。
そんな中、産保センターの職員さんから両立支援制度のパンフレットをいただきました。内容を詳しく知ることができたらと思い、その後、両立支援制度について教えていただき、導入を検討するきっかけとなりました。
まだ導入したばかりですが、長期治療が必要な病気に罹患したときに離職ではなく、まずは相談していただき、制度を活用しながら、一緒に働いていけるように、これから職場内でも両立支援の普及・啓発、風土づくりに取り組んでいきたいと考えています。(※2)
今後は組織内での周知、円滑な運用に向けて、セミナー実施等でかかわるとともにこの事業場をロールモデルとして地域全体のコンセンサスがすすみ、地域のくらし・活力につながるよう、活動をしていきたいと考えています。
※1、2 内容を掲載させていただくにあたり、事業場様の承諾をいただいています。