今月の現場から(保健師コラムリレー)

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支え合える社内風土を目指して

ブラザー工業株式会社 保健師 小島千奈

弊社では、シニア雇用の増加や、将来的な雇用年齢の引き上げにより、働きながら病気を治療する人が増えることが予想され、病気になっても安心して働き続けられる会社でありたいと、治療と仕事の両立支援に力を入れるようになりました。具体的には治療と仕事の両立支援ガイドラインの作成や、疾病を理由とした短時間勤務制度の制定、治療と仕事の両立支援に関する社内HPの新設など、様々な支援体制を整えてきました。

 特に今年度からは新しく社内ピアサポートの活動を開始しています。ピアサポートとは「同じ課題や環境を体験する人が、対等な関係性(ピア)で支えあうこと」を表す言葉ですが、弊社では同じ疾患や治療を経験している従業員同士がつながり、支え合える場を作りたいという思いから社内にピアサポートを立ち上げました。がんに限らず様々な疾患において、治療と仕事の両立に関して「サポートしたい」「相談したい」という思いを持った方が30名ほど手を挙げてくれました。
 今年度はキックオフとして参加者同士の交流会や疾患別の座談会などを行いました。疾患別の座談会では、「がん」や「不妊治療」をテーマにして、少人数・オンライン形式で実施しました。普段話せないような治療生活や、仕事との両立への思い、職場への伝え方など、オンライン上でも皆さん活発に意見交換をしていました。
 また、悩んでいる方の相談に乗ったり、自身の治療体験を社内に発信するなど、自身の経験を生かした社内活動にご協力いただける方を”ピアサポーター”とし、傾聴法やバウンダリー(境界線)などをテーマに教育も実施しています。

 病院にも患者会などのピアサポートがありますが、社内にピアサポートがあることで、より身近に同じ立場の人がいる、一人ではないんだという安心感につながればと思っています。会社は人生の大部分を過ごす場所なので、そこに心の支えとなる場所があることはとても重要です。
 また、最終的にはこの活動を通して、治療と仕事の両立について社内全体の理解を深め、必要な時には安心して相談できる・支えあえる風土、体制を作って行きたいと考えています。病気は誰にでも起こり得ることです。就業年齢が上がれば病気の可能性は増し、病気以外にも不妊治療に取り組まれる方もいらっしゃるでしょう。さらには育児、介護など、常に誰もが何かしらの事情を抱えているのだと思います。だからこそ両立支援はみんなで考えていくべき課題だと思っています。何かしらの事情があったとしても、働きたい人が働き続けることができるのが当たり前だと、誰もが思える会社、そして社会になることを願っています。

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