今月の現場から(保健師コラムリレー)

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治療と仕事の両立支援 がん療養からの復職支援をふりかえって

富士通株式会社 健康推進本部 健康支援室 保健師 真鍋恵子

高齢化社会・女性の社会進出・医療技術の進歩・定年制度の見直し等企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。 生涯に2人に1人ががんを経験し、がん患者の約3分の1が現役世代と言われており、会社全体の平均年齢も上がる中、がん治療と就労の両立支援の対応は年々増えていると感じています。

 10年くらい前に経験したがんの復職支援で、今でも心にひっかかっているケースがあります。
 健康診断後の経過観察採血異常から受診につながり、難治性のがんであることがわかりました。毎日体重測定に来室していた社員で関係性はできていたので、受診のたびに自ら検査画像や血液データを健康支援室に持参され、ひとつひとつの結果をともに理解し受け止める支援をしました。外科的治療後、補助的化学療法中に復職希望があり、会社指定の主治医の「復職可」の意見書を準備し、本人、職場の上司、人事、産業医との合同面談を実施しました。本人、職場の上司、産業医は復職の方向で検討を進めましたが、会社の最終判定は、「化学療法中のため安定した勤務は不可、就業中の安全を考え化学療法終了まで休職とする」との判断でした。
 それまでの支援の経過から、本人の就労希望が強いこと、働くことが生きる活力になるであろうこと、今後の経過や予後のことも考えると、それが尊重されることが望ましいのではないか、会社の安全配慮義務と本人の意思の尊重とのおとしどころをどこにするのか、今でも思い出されるケースです。関係者間での病気や予後に対する認識理解が十分でなかったこと、また現在のようなテレワーク体制や先行事例もその当時は多くなかったことも背景にあったろうと思います。
 がんの種類やステージ、治療内容により残された会社生活が長くないと考えられた場合、その状況について関係者とくに非医療者と事前に共通理解をすること、支援の方向性を検討する時間をもつことの大切さを痛感させられた経験でした。

 その後、弊社ではがん対策を健康経営の重点施策の1つに位置づけ、2020年には国内の7万人の従業員に「がん教育」を実施しました。さらに管理職には「仕事と治療の両立支援」についても受講してもらっています。
昨今、両立支援制度の充実化、全社ホームページへの掲載など環境の整備がされてきました。一方で、会社の支援施策はあっても当事者がなかなかその情報にたどりつくことができない状況があるのも事実です。
 また年に一度、健康関連データをまとめ、組織長へフィードバックするという取り組みを実施していますが、昨年担当職場のトップへの説明会の中で保健師から両立支援について情報提供を行いました。それ以降、短期間の療養から復職するケースについても事前に保健師へ相談が入るようになり、仕事と治療の両立サポートへとつなげています。

 保健師は社員の一番近いところにおり、支援の入り口になることが多いと感じています。日頃の健診事後面談、保健指導、長時間労働者面談などの面談機会を大切にして社員との関係性を構築すること、機会あるごとにアンテナを高くはり社員の働く環境や健康情報をキャッチすること、そしてタイミングをみながら必要な健康支援につないでいく、言わば、コンシェルジュのような機能を発揮しながら今後もひとりひとりの社員に寄り添っていきたいと思います。

※本コラムで紹介している事例は、筆者の自験例を元に作成したものになります

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