今月の現場から(保健師コラムリレー)

woman

最近の保健師活動と治療と仕事の両立支援

NEC保健師・小室

昨今、スーパーフレックス、時間単位の休暇、在宅勤務など勤務制度が充実してきています。ワークスタイルの変化にともない、例え、がんになっても休業せずに放射線治療を受けることができ、視覚障害を抱えていてもラッシュアワーの電車に乗り込むことなく自宅で始業できます。労働者本人の求めを端緒に始まる両立支援において、支援の求めはなくなりつつあるのでしょうか?今どきの産業保健において、両立支援の求めをキャッチするためにできることは何か、自身の経験と最近の取組みをつうじて考えてみたいと思います。

 弊社社員は一言で言うととても真面目。病気があっても休まない、仕事に穴を空けたくないという方がまま見受けられます。印象深い2例を紹介します。出会った当時、支援希求のかけらも見受けられなかったものの、次第に求めが生じ支援に繋がった事例です。
 Aさんは我々の部門内にある休養室を利用されますが、たいへん口数の少ない方でした。Aさんは実は、抗がん剤の治療中で、とにかく横になりたかったのです。しかしながら我々に信頼を寄せきれず口をつぐんでいました。Bさんとの出会いはメールでした。怒り心頭、注意喚起を切々と訴えていました。実は、Bさんは難病により視力が低下していました。回復への思いを強く持ち、ままならない現実を受け入れられる段階にはなく苛立ちを表出させていたのです。Aさん、Bさんの現在ですが、就労継続されており、我々のところに時折顔をみせ近況を語ってくれる関係が続いています。
 当時から保健師ができたことといえば、共感的に、受容的な態度で応答する。けして特別なことではありませんでした。日頃から社員に強く関心を持ち、じっくり観察し、コミュニケーションを取る。こうした保健師の日常の中に支援の糸口が眠っているのかもしれず、よそ見していると見過ごす、そんな経験だったように思います。

 保健師の視線は、集団にも向けられます。各種データ分析より優先順位をつけ健康施策を実践していく。社内の相談利用の状況を見てみると、自主相談者の約3割が社内サイトを見て相談行動を起こしていました。このことから今年度は、相談のハードルを下げることを目的にWebサイトの改修に着手しました。取組みメンバーに社員対応の最前線、保健師をアサインした結果、見やすく親しみを感じられるサイトにリニューアルすることができました。日頃の社員対応の地道な積み重ねが反映されており、保健師は社員との直接対応はもちろんですが、間接対応をとおしても社員に寄り添うことができると感じられる取組みになりました。
 労働者本人の求めを端緒に始まる両立支援において、相談できる関係性の構築や相談ができることの周知は不可欠な要素だと考えています。保健師は社員の身近な存在であれるよう、常に社員に関心を持ち寄り添い支援を行う。一方で寄り添いの形は一様ではないかもしれず、時代に見合った両立支援の形を見出し実践していくことも求められているのではないかと考えています。

※本コラムで紹介している事例は、筆者の自験例を元に作成したものです。

ページのトップへ戻る