愛知産業保健総合支援センターでの治療と仕事の両立支援事業における様々な「連携」
愛知産業保健総合支援センター 産業保健専門職 早川明子
愛知産業保健総合支援センター(以下、当センター)では、治療と仕事の両立支援事業として、様々な「連携」を重視した活動を展開しています。
①労働者・主治医・事業場関係者間の連携支援:治療と仕事の両立支援においては、労働者自身が事業場関係者に申出・相談し、しっかり話し合える関係づくりと、必要な通院治療の為の休暇制度や柔軟な勤務制度など、社内ルールの整備が重要です。当センターでは、事業場訪問支援による社内の風土づくりや制度構築の支援、および個別調整支援として患者(労働者)および主治医の同意を得て主治医を交えた話し合いの場に同席するなど、関係者間の連携強化支援を行っています。
②医療機関との連携:病気診断直後の早期離職を防止し、治療や副作用・経済的不安等を解消して少しでも前向きに治療に臨み、療養期間を安心して過ごせるよう、愛知県内のがん拠点病院や大学病院、リハビリテーションを中心とした地域の中核病院等と、「両立相談出張窓口の開設に係る協定」を結び、病院への出張相談を実施しています。現在は名古屋市内を中心とする8か所ですが、尾張・三河方面の病院とも調整中です。患者を取り巻く、主治医、看護師、患者相談窓口の医療ソーシャルワーカー、リハビリテーション部門の専門スタッフとの連携により、相談申込みが少しずつ増加しています。
③促進員間の多職種連携:当センターでは、メンタルヘルス対策・両立支援促進員(保健師6名・社会保険労務士4名・心理職4名)という専門スタッフ14名が、労働者と事業者双方への支援をしています。例えば、保健師と社会保険労務士がペアを組み、保健師は医療情報や健康管理に関する保健指導を含む対応を、社会保険労務士は社内就業規則や社会保障制度活用に関する助言指導をというように互いの専門領域をカバーしながら充実した支援を心がけています。また、精神疾患やメンタルヘルス不調に関する相談の際には、公認心理師等の心理職も加わり、相談・個別調整支援体制を整えています。
④就労支援専門相談機関との連携:身体の麻痺や高次脳機能障害、進行性難病等、現職復帰が困難な相談事例については、通常のメンタルヘルス対策・両立支援促進員だけではなく、ハローワークの難病就職サポーターや障害者職業センター相談員との同行相談により、転職・職業訓練・障害者雇用等、当該労働者にとっての新しい働き方の選択肢を拡げる「働きたい想いをつなぐ」連携に取り組んでいます。
⑤両立支援コーディネーターの能力向上研修を通じた連携:両立支援の担い手としての両立支援コーディネーターの養成については、労働者健康安全機構本部がWEBで年7回基礎研修を実施し、当センターでは、実践能力向上とネットワークづくりを目的に能力向上研修会(初級・事例検討会・交流会)を開催しています。事例検討会では、県内の中部労災病院・旭労災病院と共催し、医師・医療ソーシャルワーカー・公認心理師等からの助言を得て、病気や治療による課題の整理と両立支援の在り方についての理解を深める機会としています。
これらの様々な連携により、支援が必要な労働者と事業者、およびそれらを取り巻く関係者の点と点がつながって線となり、また面となり、両立支援の輪の拡がりとともに、支援の方向性の深まり・高まりを感じます。両立支援に「正解」はありませんが、より良い支援を求めて、関係者間の連携を今後とも大切にしていきたいと思います。